HDDには、CMRとSMRの2種類の書き込み方式があります。それぞれ違いがあるため、HDDを選ぶ際には書き込み方式にも注目しましょう。この記事では、HDDの書き込み方式の特徴や違いを解説。おすすめのHDDを紹介しています。
パソコンのストレージには、HDDとSSDがあります。
SSDはデータ処理速度が高速のため人気がありますが、HDDも大容量で単価が安くまだまだ使いどころがあります。
HDDには書き込み方式がCMR、SMRと2種類あり、どちらを選べばいいのかわからない方もいるのではないでしょうか。
この記事では、HDDの書き込み方式の違いを詳しく解説し、書き込み方式のおすすめを紹介します。おすすめのHDDも紹介しますので、HDDの選び方で迷っている場合は、参考にしてください。
【この記事でわかること】
目次
HDDの中には、円盤状のプラッタと呼ばれる金属製のディスクが入っています。HDDは、プラッタに磁気ヘッドの磁気の力を利用して情報を書き込み、必要な時にプラッタからデータを読み込みます。
データの読み書きの際には、磁気ヘッドが指定された位置まで移動します。磁気ヘッドの移動には制限があることから、プラッタを高速回転させてプラッタ全域にデータを書き込みできるようにします。このようにHDDは物理的に駆動する部分が多いため、衝撃に弱く、故障もしやすいと言われています。
HDDの書き込み方式には、SMR(Shingled Magnetic Recording)とCMR(Conventional Magnetic Recording)の2種類があります。それぞれの書き込み方式は全く異なる仕組みです。ここでは、それぞれの書き込み方式の特徴を見ていきましょう。
CMRとは、従来からあるデータの記憶方式で、SMRよりも古い方式です。少し前までのHDDは、ほとんどCMRの書き込み方式を採用していました。
HDDは円を描くようにデータを記録します。この円のことをトラックと呼び、間隔が狭くなるほど記録密度が上がります。CMRでは、データを記録するトラック同士が隣接しており、お互い干渉しないようにガードバンドと呼ばれるすき間が設けてあり、非常にシンプルな構造をしています。
CMRでは、特定の場所のデータのみを書き換えできるため、データの上書きが簡単です。またCMRでは、データの部分的な書き換えではキャッシュメモリを使用しないため、データ書き換えによる速度低下も起こりません。
SMRは、2014年にシーゲイト社が開発した最新のデータ書き込み方式で、トラックの一部を重ねてデータを書き込むことから瓦磁気記録方式とも呼ばれます。
SMRは、CMRにあったガードバンドをなくし、トラックの一部を重ねることで記憶密度が上昇し、データ容量が約25%大きくなりました。つまり、CMRと同じ部品を使っているにもかかわらず、記録密度が上昇しており、製造コストは変わらず大容量のデータを保存できるためコスパが良いことがメリットです。SMRが開発されて以降、HDDの容量は一気に増大し、TBなどの超大容量の外付けHDDなども開発されています。
SMRは、瓦のようにデータが重なり記録されているため、特定の場所にあるデータだけを書き換えると隣接するデータまで影響してしまいます。そのため、データを書き換える場合は、そのデータ以降を全て書き換える必要があります。SMRで部分的にデータを書き込む場合は、ブロックを一時的にキャッシュメモリに保存してキャッシュメモリ内で必要なブロックを書き換えてから再度ブロックを書き込みます。
ただし、大量のランダムライトを行うと、キャッシュメモリがなくなり、急激に速度低下が起こります。CMRに比べ複雑な構造をしているSMRは信頼性も低く、大量のランダムライトが発生するNAS用のHDDには向いていないとも言われています。
HDDのデータ書き込み方式、CMRとSMRは、結局どちらを選べばいいのでしょうか。
CMRのメリット・デメリット、耐久性等を比較し、どちらを選ぶべきかを解説します。
まずは、CMRとSMRのメリット・デメリットを一覧表にまとめました。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
CMR | ・特定のデータのみを上書きできる ・さまざまな用途で使用できる | ・SMRよりも高価 ・SMRが主流になりつつある |
メリット | デメリット | |
---|---|---|
SMR | ・容量が大きく、コスパがいい ・消費電力が低い | ・特定のデータのみの書き換えができない ・ランダムライトに弱い ・頻繁なデータの書き換えで速度が落ちることがある |
SMRは、特定のデータだけを書き換えることはできないため、データ書き換えの際には頻繁にデータにアクセスすることになります。そのため、CMR方式のHDDよりもSMR方式のHDDの方が寿命も短い傾向があります。
SMRは容量が大きく、コスパがいいメリットがありますが、汎用性が低く、頻繁にデータの書き換えを行う場合は不向きです。とはいえ、速度低下はメディアキャッシュを使い切った場合に起こるため、一般的な用途で性能低下が起こることは少ないでしょう。そのため、コストをかけず大容量のHDDが欲しい場合は、SMR方式のHDDを検討しましょう。
ただし、NASなど頻繁にランダムライトを行う場合は、速度低下を避けるためにもCMR方式のHDDを検討するのもいいでしょう。
近年SMR方式の大容量のHDDは、ユーザーからの人気があることも事実です。そのため、製造メーカーもランダムライトにおける速度低下に対する対策を行っています。今後は、CMRとSMRのランダムライトにおける性能差も少なくなり、SMR方式が主流となっていくと考えられています。
データ容量よりもデータ処理速度にこだわる場合は、HDDよりもSSDがおすすめです。SSDは、半導体メモリにデータを記憶する装置で、物理的に磁気ヘッドが動いてデータを記録するHDDと比べると、データ処理速度が速いことが特徴です。
しかし、データ保存容量は圧倒的にHDDが大きく、容量に対する単価も安いため、なるべく安く大量のデータを保存したい場合はHDDがおすすめです。
HDDとSSDとの違いや選び方等は、下記記事でも詳しく紹介しています。
どっちを選ぶ?HDDとSSDの違い!寿命や速度を徹底比較>>
HDDには、パッケージや本体に書き込み方式の記載がないことも多く、購入するHDDがCMRかSMRかを見分けることは難しいでしょう。また、使用しているパソコンに搭載しているHDDがCMRかSMRかを簡単に見分ける方法もありません。
ただし、HDD各メーカーでは、公式サイトで書き込み方式について記載されています。そのため、HDDの型番がわかれば書き込み方式もわかる可能性があります。特に、Western DigitalのHDDの場合は、同じ製品でも型番によって書き込み方式が異なる場合があるためよく確認することが必要です。
下記公式サイトの製品ページで型番から、書き込み方式を確認しましょう。
HDDメーカー | 公式サイト |
---|---|
Western Digital | ハードディスクドライブ(HDD) |
Seagate | ドライブに搭載されている技術 |
東芝デバイス&ストレージ | ストレージプロダクツ(HDD) |
HDDの書き込み方式は、SMRが主流になりつつありますが、まだまだ速度低下など不具合の可能性もあることから、CMR方式のHDDがおすすめです。
ここでは、CMR方式のおすすめHDDを6つ紹介します。
ほとんどがNAS用のHDDですが、信頼性の高さからパソコンを常に起動している方や家族でデータを共有したい方などにもおすすめです。
それぞれのHDDを、詳しく紹介します。
HDDのおすすめメーカーに関しては、下記記事でも詳しく紹介しています。
HDDの主要メーカー3社のおすすめは?歴史や故障率、保証などを解説>>
ウェスタン・デジタルのWD Blueモデルは、一般向けのHDDです。長期間の利用を実現するための設計で、2年間の保証期間があります。
「WD80EAZZ」はWD Blueシリーズの大容量モデルとして2021年11月に発売されました。8TBと大容量で価格は14,000円前後と手頃。CMRの記録方式のことから人気が高くなっています。3.5インチのフォームファクターでインターフェースはSATA、回転数は5,640rpmとなっています。通信速度はそれほど速くありませんが、大容量で扱いやすいため、データ保存先はバックアップ用のHDDとして最適です。
WD Redシリーズは、ウェスタン・デジタルのNAS用HDDです。24時間365日稼働することを前提に耐久性も高くなっており、3年間のメーカー保証があります。
容量は4TB、価格は17,000円前後です。フォームファクターは3.5インチ、回転数は5,400rpm、インターフェースはSATAに対応しています。信頼性が高いため、家庭でのデータ保管用にも利用できます。
WD20EFZXは、WD40EFZXと同様にWD Redシリーズ。ウェスタン・デジタルのNAS用HDDです。24時間365日稼働することを前提に耐久性も高くなっており、3年間のメーカー保証があります。
容量は2TBで価格は12,000円前後となっています。フォームファクターは3.5インチ、回転数は5,400rpm、インターフェースはSATAに対応しています。自宅や小型オフィスでのデータの保存や共有のために、扱いやすく、信頼性も高くなっています。
NAS用の標準モデルで、振動対策を行い従来よりも信頼性が高く、メーカー保証は3年です。
書き込み方式はCMR方式を採用しています。やや価格は高めの20,000円です。24時間365日の稼働を前提としており、振動センサー付きで振動による不具合を最小限に抑えています。フォームファクターは3.5インチ、回転数は5400rpm、インターフェースはSATAに対応しています。自己診断機能がついており、メーカーによるサポートも万全です。
先ほど紹介したST6000VN001の2TBモデルです。NAS専用HDDで24時間365日稼働を前提とし、信頼性が高く、保証期間は3年間です。不具合の診断アプリが搭載されており、不具合の予防や介入、復元のオプションを自動的に表示してくれます。
容量は2TB、価格は9,000円前後と手ごろです。フォームファクターは3.5インチ、回転数は5900rpm、インターフェースはSATAに対応しています。信頼性の高さと手頃な価格から、あらゆるデータのバックアップ、家庭用のデータ保存にも最適です。
ストレージ容量は16TBと大容量で、価格は42,000円前後と高めです。東芝デバイス&ストレージのMNシリーズはNAS用のHDD。家庭用のNASにも利用できます。
回転数7,200 rpm で3.5インチのフォームファクター、インターフェースはSATAに対応しています。回転振動センサーが搭載されており、高い信頼性があります。保証期間は3年間で、国内の電話サポートにも対応していることから、安心して使用できます。
HDDのデータ書き込み方式は、CMRとSMRがあります。CMRは従来型の書き込み方式で、書き込み速度が速く、特定の場所のデータのみ書き換えできます。SMRは新しい書き込み方式で、データを瓦のように重ねて書き込むため、データの密度が高く価格が安いです。しかし特定の場所のデータだけを書き換えることができず、キャッシュにデータを一時的に保存するため、処理速度が低下する可能性があります。
HDDは大容量化が進んでおり、書き込み方式はコストがかからないSMR方式が主流になりつつありますが、特にNASなど常時稼働を想定したHDDを購入する場合は、速度低下の心配がないCMR方式がおすすめです。
ただし処理速度を求める場合は、SSDを搭載したパソコンを選ぶのがおすすめ。内蔵ストレージがHDDの場合は、パソコンの買い替えも検討しましょう。
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